福岡地方裁判所 昭和60年(わ)126号 判決 1985年6月10日
本籍
福岡市中央区渡辺通一丁目一番四番地
住居
同市同区高砂一丁目二三番二〇号
医師
舩津純彦
大正九年二月一一日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官寺澤俊彦出席のうえ審理して、次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役二年及び罰金六〇〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、福岡市中央区高砂一丁目二三番二〇号において、形成外科・産婦人科医院を営み、その業務全般を統括しているものであるが、自己の所得税を免れようと企て、美容形成など自由診療収入の一部を除外し、割引債券を購入したり、仮名の定期預金を認定するなどしてその所得を秘匿したうえ、
第一 昭和五六年分の実際所得金額が一億三四四五万三一一六円あったのにかかわらず、昭和五七年三月一五日、福岡市中央区天神四丁目八番二八号所在の福岡税務署において、同税務署長に対し、昭和五六年分の所得金額が三四二〇万一三七三円でこれに対する所得税額が一一五三万九八〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額八〇二九万〇七〇〇円と前記申告税額との差額六八七五万〇九〇〇円を免れ
第二 昭和五七年分の実際所得金額が一億八六六九万三四六八円あったのにかかわらず、昭和五八年三月一五日、前記福岡税務署において、同税務署長に対し、昭和五七年分所得金額が四六九六万八四九三円でこれに対する所得税額が一七二四万一二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額一億一八〇三万七六〇〇円と前記申告税額との差額一億〇〇七九万六四〇〇円を免れ
第三 昭和五八年分の実際所得金額が一億一七六九万八二七七円あったのにかかわらず、昭和五九年三月一五日、前記福岡税務署において、同税務署長に対し、昭和五八年分の所得金額が四九五四万三六九四円でこれに対する所得税額が一八四〇万二六〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額六六三五万〇九〇〇円と前記申告税額との差額四七九四万八三〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示事実全部について
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書三通
一 被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書一五通
一 舩津千洋子及び田中公子の検察官に対する各供述調書
一 舩津千洋子(二通)、田中公子(二通)、赤間御幸(二通)、織田国一(五通)、藤本役雄及び平野傑の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一 検察事務官作成の「所得税確定申告書写しの作成について」と題する書面
一 大蔵事務官作成の「告発書」、「脱税額計算書説明資料」と各題する書面
判示第一の事実について
一 大蔵事務官作成の「脱税額計算書 昭和五六年分」と題する書面(検三号)
判示第二の事実について
一 大蔵事務官作成の「脱税額計算書 昭和五七年分」と題する書面(検四号)
判示第三の事実について
一 大蔵事務官作成の「脱税額計算書 昭和五八年分」と題する書面(検五号)
(法令の適用)
1 該当罰条
所得税法二三八条(懲役と罰金を併科)
2 併合加重
懲役刑につき刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情最重の判示第二の罪の刑に法定の加重)
罰金刑につき刑法四五条前段、四八条二項
3 労役場留置
罰金刑につき刑法一八条
4 執行猶予
懲役刑につき刑法二五条一項
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 谷敏行)